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永田
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人から言われて初めて気付いたけど、僕はアメリカが嫌いだ。
 
いや、別にイラク戦争とか政策とかじゃなくて。 今まで「アメリカ=かっこいい」みたいなイメージを持っている人が嫌いなだけだと思ってたけど。
 
よく考えたら、それは僕が「アメリカ=かっこよくない」って思ってることだから、要はアメリカ嫌いなんだな、と気付いた。

僕がアメリカを嫌いだと指摘した人は、帰国子女の奴なんだけど。アメリカを「あっち」とか「むこう」って呼ぶわけ。
 
その瞬間ブチギレね、これ。普段何をされても怒らない、たとえ目の前で家族が惨殺されようがニコニコしてる温厚な永田さんがブチギレですよ。 それだけは許せない。

あと、今だにアメリカンドリーム神話を信じてる奴。 このタイプも無理。

「単身渡米」とか「ドル」って言葉にグッとくる人、気をつけてください。あなたはアメンリカンドリームビリーバーの兆候が出ています。
 
もし友人で「日本は小さい」みたいなことを言い出した奴がいたら、全力で乳首をつねってください。多分、怒られます。

みんなアメリカアメリカ言うけどさ、冷静になって考えてみてよ。

ヤツラ、ピザとハンバーガーしか食わないんだよ? 蛇口ひねってもコーラしか出ないから、シャワーもコーラで浴びてんだよ? そんなの耐えられないでしょ?

あと、「おっぱい」のことも「バスト」って呼ぶからね。 「バスト」って・・・。バカか。そんなもんどう考えても深夜の通販でダイエット器具をウィンガッシャンウィンガッシャンやってる外人女の筋肉質な胸だろ。

いや、それを「バスト」って呼ぶことに関しては僕も異論はないよ。どうぞ呼んでください。
ただ、いわゆる普通の胸。筋肉とは対極の位置にある胸を「バスト」って呼ぶことは許せない。

気取りながら「最近、バストが垂れてきちゃって・・」みたいな奥様達の座談会があったとしたら僕は是非参加したい。ただ一人の男性客であるということで少し気を使われたりしたい。

「いやいや、全然垂れてないじゃないっすか~!」
「もう、何ジロジロ見てんの!」
「たはっ!こいつぁ一本取られたなあ!・・そうそう一本しかないから取り合いはダメだよ・・、ね?」
みたいなね!みたいなね!くぅ~、たまんねえ!のど乾いちゃった!

そうじゃねえ。

そうじゃねえよ。「バスト」という呼称が許せないって話だ。どっからか湧いてきた奥様達は消えてくれ。また後で順番に相手してあげるから・・、ね?

はっきり言って僕は「バスト」なんて揉みたくないんだよ。いや、揉みたくないことはない。でも僕が本当に揉みたいのは「おっぱい」なんだよね。

おっぱいを揉みたくなったら、どうする?「おっぱい揉みたいです」って言うでしょ?

でもね、バスト大国アメリカでは「おっぱい揉みたいです」なんて通じないんだ。そんな国、世界中どこ探したってアメリカだけだよ。
 
まあ、東南アジア圏ではまだ通じないところもあるかもしれないけどさ。 でも東南アジアの人は、誠意を持って「おっぱい」って言い続ければ、きっとわかってくれるはず。

最初は、戸惑いも起こるだろう。でも、二晩も三晩もぶっ通しで言い続けてごらんなさい。

最終的には彼らが「おっぱい」を認めてくれると思う。 これは、侵略じゃない。「おっぱい」という価値観の共有だ。素晴らしい歴史的な出来事である。

きっと、彼らはその記念日を祝して祭りを開くだろう。 老若男女、おっぱいを丸出しにして踊り狂う。

そこに「世界まる見え」あたりが「世界の仰天祭り」みたいな特集で取材に来て欲しい。

スタジオで「いいなぁ、僕も行きたいなぁ」的なぬるい発言をして、ややウケを取る所ジョージ。

それに気を良くした所ジョージは「日本でもこういうのやりましょうよ!」と発言。
 
和やかな笑いに包まれている時に、たけしがすかさずピコピコハンマーでピコンと一撃。

また生まれる笑い。
 
それは、いつも通りの収録の風景だった。
 
だがしかし、所ジョージだけはピコピコハンマーの痛さをいつまでも、いつまでも、忘れなかった・・・。

~~~~~~

数日後、所ジョージはかねてより考えていた作戦を実行に移す。
 
この日は、「奇跡体験!アンビリバボー」の収録だった。 VTRが終わった瞬間、所ジョージは全裸になった。
 
唖然とする清水圭。
 
あわてて、スタッフが所ジョージのもとに駆け寄るが、一向に服を着ようとしない。 結局最後まで、服を着なかったためこの日「アンビリバボー」が収録されることはなかった。


この話を聞いたたけしは、「世界まる見え」収録日にジョージの楽屋に向かった。
 
自分の冠番組に泥を塗られたとあっては黙ってるわけにもいかない。

二人のスタッフを引き連れて、たけしはジョージの楽屋に入った。

ニヤニヤ笑いを浮かべるジョージに、たけしがすごい剣幕で怒ろうとした瞬間だった。

ゴン、と鈍い音とともに、たけしは前のめりに倒れた。

後頭部の激しい痛みで気を失う寸前に、後ろを振り返ると、スタッフが警棒のようなものを握り締めているのが見えた。そう、スタッフは全てジョージによって買収されていたのだ。
 
「ククク、よくやってくれた。報酬にちょっと色つけてやるよ。」 ジョージは額にかけていた色の薄いサングラスをかけ直し、タバコに火をつけた。

「ありがとうございます!ジョージさん!」 廊下で見張り役をしていたスタッフも入ってきて、ジョージに元気よく一礼をした。

「それにしても・・・」 後頭部を殴ったスタッフが、倒れているたけしをチロッと見ながら、言った。

「さすが世界の北野だ・・・。いい身体してやがる。」

「うほっ、見ろよ。肌なんかぷりぷりしてるぜ。まるで女子高生だ。」 スタッフは二人同時に唾を飲み込んだ。

「なぁ、ジョージさん。どうせこのまま殺しちまうんでしょう?だったら一回だけ・・・」

ジョージは暴走を止めるように、スタッフの言葉をさえぎった。

 「バカヤロが・・・。体に精液でも残して、DNA検査でもされたらどうする?あとは、黙ってプロに任せとけばいいんだよ。女が抱きたいんなら、後で好きなだけ抱かせてやる。たけしには手を出すな。」 サングラス越しに見えるジョージの眼光は、とてもカタギのそれには見えなかった。

~~~~~~

あ・・頭が痛い。
 
ん?動けない・・・。

あれ?縛られてる!?

薄暗い・・・。 どこだろう?

数々の疑問がたけしの頭に浮かんだ。

「気分はどうだい、お姫様?」

「だ、誰!?」

暗闇の向こうから聞こえた声に、反応すると自分の声がやたら反響するのに驚いた。
 
とても広い場所・・・、体育館?それとも倉庫?

・・・え、倉庫!? たけしは、自分の考えたことにハッとした。倉庫と言えば、ヤクザ映画とかじゃ人を始末するのに最も良く使われる場所だ。

自分も映画監督の端くれだ。それくらいはわかる。
 
まさかジョージの奴、本気であたしを殺すつもり?ま、まさか、冗談よね。そう、ドッキリよ、ドッキリ。
 
ズキズキと本気で痛む後頭部のことを必死で忘れようと、たけしは自分にそう言い聞かせた。

声の主らしき足音が近づくにつれ、1人じゃないことがわかった。たけしはそれがドッキリのプラカードを持ったジョージとカメラマンであることを祈った。
 
しかし、その願いは暗闇に目が慣れるとともにあっさり打ち崩された。どっからどう見てもヤクザ4人だ。

「お目覚めのところ悪いが、コイツら三人の下の相手してやってくれや。」 あっさりと言い放たれたセリフをたけしはなぜか他人事のようにボーっと聞いていた。

「本来、こういうことは足がつきやすくなるからご法度なんだが・・・。コイツら、お前のファンらしくてね。無碍に突っぱねるのも労働意欲上良くないからな。まあ2,3時間我慢してくれや」

1人の男が近づいてきて、たけしの服をおもいっきり破った。 たけしはそのとき初めて悲鳴を上げた。そして、これがまぎれもなく真実であることを悟った。

「ちょっと!!アンタたちやめなさいよ!あたしにこんなことしてタダで済むと思ってるの!?バカヤロウコノヤロウ!」
たけしは、縄を抜けようと力いっぱい身をよじった。しかし、たけしの思いとは裏腹にもがけばもがくほど縄は強くたけしの身体を締め上げた。

「おいおい、あんまり暴れるとコイツら容赦しないぜ?お前も死ぬ前に痛い思いしたくないだろ?」

「へへへ、アニキ。俺は別に先に殺しちまってもいいですぜ。」

「俺も殺ってから犯っても別に構いません。」

「ヤッてからヤって、ってそれじゃどっちが先かわかんねえじゃねえか!」 男達はゲラゲラ笑い出した。

「最低、あんたたちは最低よ!バカヤロウコノヤロウ!」

「フフフ、どんなに騒いでもここにダンカンはいないんだぜ?」

「ダンコンならあるけどな」

ゲラゲラゲラ


男達はゆっくりとたけしに近づいていった。

「いや、やめて!来ないで!いや、、、いやああぁぁぁーーーー!!!」

~~~~~~

それから先、たけしの姿を見た者はいない。

そして所ジョージは、今日も当たらない宝くじのCMに出るのだった。
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