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こないだの金曜、終電間際に電車に乗ったんですよ。金曜の終電間際なんて、そりゃもうかなりの乗車率です。
で、ギュウギュウになってたんですが、なんか目の前の人が妙に香辛料臭いんですね。
パッと顔見たら、インド系の方なんです。もうなんかこれだけで、結構嬉しいじゃないですか。
いや、なんか変な差別とかじゃなく。中国人が「アイヤー」って言ってるとこ見たらテンション上がるでしょ?フランス人が目の前で「ジュテーム」って言ってたらホクホクした気分になるでしょ?それと同じ。
それで彼がケータイを開いたんです。その壁紙もバッチリ見てたんですが、インド映画のパッケージみたいなモロな感じのやつなんです。これはキタな、と。こんな模範的なインド人がいるなんて世の中捨てたもんじゃねーな、と。ワクワクが止まらない。
いや、わかってるよ?ものすごいステレオタイプな偏見だってことを。でもだからこそ嬉しいじゃない。チョンマゲしたニンジャを見つけた時の親日家のアメリカ人、みたいな心情。いや、この例えこそステレオタイプか。
もう、こうなったらとことんまで見てみたい。さあ、チョンマゲニンジャよ、ハラキリして見せろ!
インドっぽさをもっと見せつけてくれ!香辛料の臭い、インド映画っぽい壁紙、とリーチはもうかかってるんだ!
あとはお前が取るべき行動を取り、俺が「ビンゴ!」と叫ぶだけだ。さあ!さあさあ!
彼は開いたケータイで、電卓を起動させた。
電卓・・?インド人・・。はっ!インド人と言えば、計算ではないか!キタキタキタ!…いや、落ち着け。大物は釣り上げるまでが難しいのだ。じっと堪えろ!見届けるんだ!
彼はゆっくりと指を動かし、焦らすように数字を打ちこんでいった。
69+25
「数字キー」から「=キー」にスっと親指を動かす、洗練された無駄のない動き。シンプルにして優雅。寡黙にして雄弁。そう、彼はガンジーだ。ガンジーなのだ。
この偉大な無抵抗主義者は、世界一のオーケストラを率いる指揮者の初動作のような荘厳さと、動物園でオランウータンの解説用音声ガイダンスを聞くためにボタンを押すかの如き何気なさ(ガストで店員を呼ぶときのような、と言ったほうがわかりやすいか?)で「=キー」を叩いた。
94
ブラヴォー…。思わず声が漏れる。俺の心のビンゴシートは彼によって全て開けられた。無粋を承知であえて言わせてもらおう。
「ビンゴ!」
このショーに感動して、情けないことに俺は当然の疑問にしばらく気がつかなかった。誰もが思う疑問。
「何の計算だよ?」
この一言に尽きる。何の計算だよ?あと、そんくらい暗算しろ。
そんな俺の疑問を知ってか知らずか、彼は一旦閉じたケータイをまた開き、もう一度電卓を開いた。
しめた!チャンスだ!次の計算で彼の真意がわかるかもしれない!
69
また、これだ。なんなの?お前は?そんなに69と何かを足したいの?
69000
何!?69000だと?ははあ、わかったぞ!さっきの計算の真意が!
恐らく69000っていうのは、家賃か何かだろう。25000も何らかの出費だろうね。0を3つ省略していたんだ。つまりさっきの計算は69000と25000の足し算を簡易化したんだ。そんで94。
「94って?94000円!?うそーん、そんなにかかるぅ?…いや、簡略化したせいで間違えたに違いない。もう一回、今度は略さず計算してみよーっと」っていう気持ちだろう。うんうん、わかるわかる。あるよね、そういうの。
彼は25を押し終わったあと、やはり焦らすようにゆっくりと0に手をかけた。
69000+250
うん。
69000+2500
うん。
71500
ええー!何してんの!?操作ミスすんなって!
彼の顔をチラッと覗くと、満足そうな顔。そのままケータイをポケットにしまう。それ以降、ケータイが出されることはなかった。
いやいやいや、おかしいでしょ?そんな値切り方ねえよ。なに1桁単位で値切ろうとしてんの?大胆すぎ!
…ちょっと待てよ。もしかしたら、間違えてたのは俺か?計算の簡略化とか、ただの勘違い?
え、じゃあ何だったっていうの、最初の計算?インド人の態度から見るにどっちの計算も操作ミスじゃなさそうなんだよ。
なんか電卓を使ってやる一人遊び?ソリティアみたいなやつ?いや、そんな感じじゃなさそうだしなぁ。
ちくしょう!わかんねえよ!何なんだよ!
いや、いかんいかん。熱くなるな。俺がこの謎を解かなきゃ誰が解くってんだ。もう一度最初から洗っていこう。
まず、電卓という形に捉われすぎちゃだめだ。電卓の機能を使っていてもケータイなんだ。そこを念頭に置いて考えよう。
ケータイの数字キーといえば、メールするときは文字入力に使う。むしろ、ケータイの数字キーといえばまず思い浮かぶのはそっちだろう。
もしや、暗号の形で俺に何か伝えたかったのだろうか?その可能性はある、な。
よし、彼の打った数字を一度文字に置き換えてみよう。俺のケータイにあてはめると・・
「はらかな」
「はらんかなを」
!!!!!
よろしく「ハラン=カナヲ」さん!いや、ご厚意に甘えてこう呼ばせてもらおう。よろしくね「ハラカナ」!
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